「情報学概論Ⅱ」とは何ものか?

「必要ないんじゃない?」ともの凄く批判されている「情報学概論Ⅱ」について考えてみます(やっと)。ほとんどcloudさんの言及に新たな表現を加えただけなんですけどね・・・。

そもそも「概論Ⅱ」とは何か?

  • 「情報学概論Ⅰ」を継承する講義系授業である
  • 情報学部の研究内容を俯瞰することを目的とする
  • 3プログラムそれぞれの全体像を学ぶ
  • 改めて3プログラムを捉え直し、進路決定の一助とする
シラバス参照)

「情報学概論Ⅰ」との関係〜得られる知識の問題〜
私たちはIDプログラム生である以前に情報社会学科生であり、それ以前に情報学部生です。「情報学概論Ⅰ」は情報学部生としての教養を育むための科目と考えることができます。これが「情報学概論Ⅱ」になっていくにつれて、議論の中心が各プログラム個別のものに移っていきます。
もし、情報社会学科生としての教養を求めるのならば、CSに関する説明は(転学科希望者を除いて)必要ありません。が、「CSとの境界面」言い換えれば「CSの研究者・研究成果とどう付き合っていくか」という学習は必要でしょう。文工融合を鑑みて情報学部生としての教養を求めるのならばCSに関する大雑把な知識は必要と言えます。
「CSの研究内容も学ぶべき」という考え方を仮に〈学部的教養論〉と呼ぶことにして「IS・IDのみでよし」という考え方を仮に〈学科的教養論〉と呼ぶことにします。
ここで問題なのは「情報学概論Ⅰ」でどこまでの範囲を扱うかです。この指摘はかなり前に赤尾先生がしておられます。現在では学部全体としての教養を主として扱っており、各プログラムに踏み込んだ内容はあまりないように思います。ただし竹林先生は科学科と社会学科で扱う内容の密度を変え(科学科→セキュリティ、社会学科→プライバシー)るなど、学科による差異化を図っていました(藤井先生は行っていません。石川先生は知りません)。もし「概論Ⅰ」で〈学部的教養〉が完結したとみなすならば、「概論Ⅱ」は〈学科的教養〉に力点を置くべきではないでしょうか? あ、ちなみに私は〈学部的教養〉の必要性は否定していません。CSの視線も必要だと思います。ただ「概論Ⅰ」の繰り返しや表面的なCSの理解(「JABEEとは何か」とか)は無意味だと思います。
なお〈学部的教養〉ならば3年以降の「情報学特別講義Ⅰ〜Ⅲ」を受講することでも得られるはずです。
なぜCS的な知識が必要かと言えば、cloudさんが指摘する問題(むしろこっちは「情報学概論」で何とかなる問題ではないですね)もそうですが、「情報学部生として知ってないと恥を掻くこと」だからです。本を読んでいても「ユビキタス化が与えるインパクト・・云々」と出てきて「ユビキタスって何だっけ?」では困る訳です。情報社会学科生が読む多くの文献に登場するであろう技術用語・用例を把握しておく=教養 です。

研究室紹介は是か非か〜研究領域の俯瞰図〜
昨年は「概論Ⅱ」で研究室紹介がありました。・・・というと語弊がありますね。CSはカリキュラム紹介と研究室紹介が主でした。IDはおまけ程度に研究室紹介がありました。ISは(ほぼ)ありませんでした。1年の段階での研究室紹介のメリットは「このプログラムに登録するとこういう研究への道が拓ける」という具体的なイメージが湧くという点です。全ての研究室を網羅することは現実的ではありませんが、幾つかの研究室を例示することは可能です。昨年CSのパートでは「人間系」「ネットワーク系」など、旧カリキュラムに基づいたカテゴリ分けで幾つかの紹介がなされていました。・・・だからと言って「それはいけない」とは思いません。IDでは新カリキュラムの発展4領域を軸に講義が進められ、講義の最後にその領域と関連のある研究室を紹介しました(だから「シェフタル研」や「厨子研」はなかったのか・・・)。
IS的な方法でも研究領域の俯瞰ができます。ISでは情報システムとは何かという問いから始まり、コンビニのPOSシステム等、実社会への応用の話に移りました。どのプログラムでも研究領域の俯瞰はできていました。
私は研究室紹介については「あってもなくてもいい」と思います。研究室について知りたいのなら(教員HPはあまり当てにならないので)「情報学部研究室名鑑」みたいなものをつくるといいと思います。「MOVE」に寄せるような記事が載るんです。どの教員がどのプログラムに研究室を開いているかを一覧にしたメールが以前届きましたが、研究室が分からないと話にならないですよね。プログラム選択時に判断材料が揃うことは大切だと思いますが、必ずしも「概論Ⅱ」で行う必要性はないでしょう、きっと。cloudさんが指摘するように広い情報学の中で”見落とす”こともあるでしょうから、「概論Ⅱ」の〈俯瞰図〉と研究室紹介がどこかでリンクできれば良いのでは??
「ガイダンスで十分」っていう説明をする必要はないです。私はオープンキャンパスから見ていたのであの「3プログラムの図」はイヤと言うほど見ています。研究室の大雑把な説明くらいならガイダンスでも十分だとおもうのですが・・・?

プチ〈歯ごたえある科目〉体験授業
赤尾先生のエントリーです。
問題は何を〈歯ごたえある科目〉とするかでしょう。いわゆるコア科目は、IDでは2年前期「ガバナンス論」、ISでは2年後期「情報システムデザイン論」、CSでは3年からの実験がそれに当たる訳です。IDなら1年後期からでも容易にプチ講義はできそうですが、IS・CSともなると前提知識が足らないでしょう。ではIS・CSを「A&D」にするかという問題です。「プログラミング」で十分と考える人もいるでしょうし、「A&D」の桁違いさを実感しなければならないと考える人もいるでしょう。けれど「プログラミング」を履修しなければ「A&D」に移行できないというジレンマがあります(しかも「A&D」は技法系科目なので、IDは「フィールドリサーチ」か?)。それからIS・CSの骨のある科目を見学しても意味が理解できるか、チョット疑問です。「ガバナンス論演習」を盗み見た私は「面白そう!」と感じたわけですが、これはあくまで「ガバナンス論演習」だったからです。IS・CS系の授業で面白さが伝わるか、IDにとって(というか2年にとって)未知数なのです。
必ずしも既存の科目をプチ〈歯ごたえのある科目〉として考える必要はありませんが・・・。

3プログラムの全体像〜CSの全体像は必要か?〜
こちらは教養としてのCS関係知識ではなく、あくまでCSの全体像を知る必要があるかどうかという問題です。

プログラム選択の為の「概論Ⅱ」?
「概論Ⅱ」は情報学部の知識を得るための科目(〈学部的教養〉とは区別します)か、それとも進路選択のための科目か。
もし「概論Ⅱ」の成績評価がテスト方式であることに意味があるのだとすれば、まさしく「概論Ⅱ」は進路選択の為の科目ではないということです。知識としての〈学部的教養〉(というか、プログラム的教養?)を獲得することを目指しているのでしょう。情報学でどういう研究が可能か学ぶ科目?
つまり「概論Ⅰ」を発展させただけの科目なのか、プログラム選択の為の判断材料を提供する科目なのかはっきりしていない現実があるんです。


以下は考えられる論点です。
論点1:「情報学概論Ⅱ」は必要か

論点2:「情報学概論Ⅱ」はどんな知識・教養を提供するか

論点3:「情報学概論Ⅱ」はプログラム選択の判断材料を適切に提供するか

論点4:「情報学概論Ⅰ」との関係性を考え直す

論点5:「情報学概論Ⅱ」を周辺で支援するもの
例えば、他の授業科目、プログラムガイダンスなど

論点6:「情報学概論Ⅱ」の各パートはどうあるべきか(狭い議論で)

論点7:研究室紹介について

論点8:プログラム全体像について

論点9:「情報学概論Ⅱ」は教職科目だが、その意味は?

※ そのつもりはなかったのですけれど、結構否定的に文章を書いていました・・・。決して悪意はありませんので、あしからず。