聖火リレー問題――平和についてのSecurity――

私はガバナンスの目指す最も重要な価値の1つが「平和」だと考えています。
オリンピックは平和の象徴と言われていますが、これはオリンピック憲章(PDF)にも謳われています。

The goal of Olympism is to place sport at the service of the harmonious development of man, with a view to promoting a peaceful society concerned with the preservation of human dignity.
オリンピズムの目標は、スポーツを人間の調和のとれた発達に役立てることにある。その目的は、人間の尊厳保持に重きを置く、平和な社会を推進することにある。

国際社会は、オリンピックというイベントを通して「平和」という価値を再生産していると見ることができるでしょう。
ガバナンスにおいて秩序形成が重視されるのは、根本的には無秩序な「万人の万人に対する闘争」状態を回避することが意識されているからだと思います。民主主義の社会では暴力による秩序形成(そもそも秩序が形成されるのか?)は否定されますから、言論による秩序形成が求められます。
そのためには他者の尊厳を蔑ろにしないような「平和」な社会の実現を目指すべきです。

ダライ・ラマは「チベットには信教の自由がない」と強調。暴動は「独立を求めたものではない」と語りながら、独立をもくろんでいるとする中国の主張を否定、内政、文化、宗教をチベット人が担当する高度な自治を中国政府に求めた。
特集■チベット暴動

ダライ・ラマはガバナンスの実現を要求していると言えるでしょう。”人間の尊厳保持に重きを置く”ことが「平和」への条件と捉えられるからです。そのため、抗議活動も言論(表現)でなくてはなりません。非暴力を主張するIOCのケビン・ゴスパー氏のコメントを評価します。

We're in a democratic country. If people want to protest, that's a matter for them, as long as they do it peacefully.
Olympic torch reaches Australia(Al Jazeera Endglish)―わりと下の方

平和を象徴しながら世界旅巡している聖火は、平和への危機を目の当たりにしています。ルート短縮や各国の警備(security)によって「平和」が保持されているか、それもまたガバナンスか。