公共図書館と公貸権

半月ほど前になりますが、おつきみさんが、図書館で利潤追求できるサービスが可能なことが民間委託においての条件であろうかといった意見を表明していました。コメント欄で意見を書きましたが、直接的な金銭の徴収によって利益を得ることは無理だと思います。


タイトルにもしましたが、公貸権という考え方についてです。図書館は無料貸本屋であるという誤った考え方があり、(上記ブログで赤尾先生も問題にしましたが)ベストセラーばかり図書館に並ぶと、本屋・出版社・著作者が儲からないです。それで〈使用料〉を徴収ですか!? TSUTAYAと同じですね。本来は、民主主義社会を支える生涯学習機関ですよね。商業主義が入る余地はありません。ただ、著作者の権利を侵害したことへの公共的責任を負う機関からの補償として公貸権があります。日本ではまだ法律になっていません。
イギリスの例で話を進めます。公貸権とは、”a legal right to receive payment for the free lending of their(Britsh authors') books by public libraries”つまり”英国の著者が公共図書館による無料貸出に対する対価を受け取る合法的権利”のことです――( )内はvanyaによる注釈――。
the Public Lending Right Act という組織が中央政府のお金を預かり、間接的に著者へ補償金を支払うという仕組みです。著者は登録制で、申込をしなければ補償金を受け取ることはできません。また補償金の額は、イギリス国内の公共図書館の中で(標本調査で)貸出数の多さによって決められます。また、上限が定められています。
Public Lending Right は知的財産権でありながら著作権とは切り離されて考えられています。plr.uk.comには”The Act(Public Lending Right Act) established PLR as an intellectual property right, entirely separate from copyright”――( )内はvanyaによる注釈――と書かれています。
(英語、苦手なので間違っていたらごめんなさい)


基本的に公貸権は著作者の権利を守るための考え方であり、企業の儲けに結びつきにくいと考えることができます。公貸権による補償責任は原則として公共(国・自治体など)が負っています。仮にこれらを利用者に負担させたとしても(オランダではこういう動きがあるようです)、委託を受けた指定管理者が儲けることはありません。
ええと、図書館と営利に関連して(指定管理者のテーマと大きく外れる恐れがあるのですが)イトーヨーカドーの「こども図書館」が個人的には気になる話題です。

参考ページ:
公貸権とは何かがわかる日本語のページ
http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Keyaki/3943/plr.html
イギリスの Public Lending Right に関する基本情報が得られるページ
http://www.plr.uk.com/enhancedindex.htm
著作者も図書館を完全に敵視している訳ではない
http://www.jca.apc.org/tomonken/pen.htm