議論の流れなど

パブリック・コメントの意義と可能性」についてどう合意形成するのか難しいところではありますが、とりあえず、今までの議論の流れをまとめてみました。
新歓祭が終わった辺りから参入しだした人もいるので、パブコメブームが再燃している今日この頃。ここらでまとめ的なことをやってみようという試みです。


ことのおこり
吉田先生の演習で浜松市の交通安全計画に関するパブコメを取り扱う
浜松市の交通政策に関する書き込みが増発する
赤尾先生が「交通政策じゃなくてパブコメについて書いてね」的なコメントをする
パブコメ・エントリー第一世代
代表的なエントリーとして、よく引用されることの多いかげぼうしさんの「パブリック・コメントは難しい・・・。」(4/30)を挙げます。ここでは率直な感想が述べられていて、主要な論点は”意見が出しにくいから、市民から意見がなく、広い範囲から話を聴けることがない”ので”もっと簡単に意見できるもの”が必要なのではないかということです。このエントリーから〈意見がない〉とはどこまでの量を指すのか、また〈もっと簡単に意見できるもの〉とは何かという議論へ展開できます。
Price_lessさんは「パブリックコメントの有効性①②」(4/30)の中で市民1人ひとりが関心を持つことと、パブコメ募集案の現在の政策決定段階に不適合性があるのではないかと制度自体に関してやや否定的にコメントしています(詳しくは上記リンク先で確認してください)。
スモモさんのエントリー(5/1)も挙げておきます。市民側の反応として〈分厚い計画書〉を読む気にはなれないし、行政側も〈分厚い計画書〉に対する〈分かりやすい注釈書〉を作成する余力があるかと考えたとき、不可能とまではいかなくとも困難であると指摘しています。
少し変わった提案としてはみそウーマンさんの「パブリックコメントのほんとのところ」(5/2)があります。彼女(もしかしたら彼)は、かげぼうしさんの〈意見がない〉の意見を受けて①NPOパブリック・コメント提案の母体として利用するのはどうか②バリューチェーンなど企業の合意形成過程をうまく利用すればいいのではないか、と提案しています。
私、vanyaの反応
ちなみにかげぼうしさんのエントリーへのコメントの中で赤尾先生が紹介している私のエントリーはこれ(4/28)だと思います。それからPrice_lessさんのエントリーに対してはこちら(4/30)で色々書きました。
ややあって
d5g8さんはパブコメを”目安箱みたいなもの”と捉えていました。このエントリー(5/6)は特にコメントが盛んなのですが、〈広く意見を求める〉ことについての問答は必見だと思います。〈広く意見を求めること〉に関しては甲府盆地さんも言及(5/1)していることです。d5g8さんは追加調査(5/28)も行っているので参考にして見てください(・・・パブコメとは無関係の失敗談も)。
gtp-mikanさんが、しっかりした意見を出さなければいけないという問題意識を表明しました(5/7)。こういう問題意識を持った人は何人かいます。
色々あった5月
吉田先生の「ガバナンス論」が終わる
佐藤先生の「ガバナンス論」が始まる
「情報倫理と法」フル視聴&レポでみんな絞られる
「メディアスタディーズ演習」ブログ演習に上陸
新歓祭
コーポレートガバナンスの憂鬱始まる
パブリック・コメントについてすっかり忘れる
赤尾先生の演習で「ブログでの合意形成」について話し合う
ちょっと思い出す
6月に入って…
6月より少し前ですが、市民の関心の問題について、”自分の利益のために”パブコメ制度を”利用しようという意識が必要”と考えたのはvivaダンスサシティさん(5/25)です。比較的制度について否定的な捉え方です。
ななさんはパブコメ制度の市民への情宣が必要だと言いました(6/6)。彼女(もしかしたら彼)は肯定的に捉えているようでした。
最近(6/19)ですと、アンチ ハンペンさんがパブコメに関する本を調べた上で意見を述べています。個人的には”意見の適切さなんて誰が測れるんだとか思うが”という発言が議論すべきポイントかと思います。
で、結局どうなのよ!?
私の恣意も含んでしまいますが、以下の論点が考えられます。
<市民の問題として>
・意見が少ない(と思われている)
 →どのくらいあれば意見が多いと言えるの?
 →そもそも意見が多い必要があるの?(d5g8さんのコメント欄が参考になる)
・制度を知らない
 →周知させる方法は?
・市民は忙しい、ゆえにパブコメへの参加は困難
 →簡単にパブコメできる方法は?
・しっかりとした意見を出す必要性
 →能力の問題。時間・手間の問題。(そこまでしてパブコメする意味はあるか)
<行政の問題として>
・専門的な計画書が読めない
 →スモモさんのエントリー参照
・お役所表現が分かりにくい
・どの段階でパブリック・コメントを求めるか
 →Price_lessさん、佐藤先生のガバナンス論とも関連
<システムの問題として>
・公示、コメント、レスポンスの3方向のコミュニケーションしか許されない
 →電子掲示板など、他の制度を併用する
・制度として〈もっと簡単に意見できるもの〉を
<意義と可能性、限界>
市民の意識はもはやパブコメを超えた問題でしょう。そういう〈限界〉もあります。
ここまでの議論を見てきて〈広く市民に意見を募集する〉=ある種の直接民主制の実現 ではないということが分かります。それなら行政手続法ではなく憲法を改正して直接民主制にしないといけません。
私の考えは5/12に述べていますので繰り返しません。


d5g8さんのコメント欄にも書き込みしましたが【情トラ】付"録"という参考になるブログがあるので紹介します。「情報共有/パブリックコメント制度に対する意見について」という長いエントリーです。